
労働紛争解決手続のご案内
5 使用者側から紛争解決手続を申し立てる利点がある場合
訴訟提起等は労働者側からなされる場合がほとんどですが、任意交渉の場で使用者側が穏当な解決を求めているにもかかわらず、労働者側が過大な請求に固執して譲らない場合などには、使用者側から訴訟提起や労働審判などの申立てを行うことを検討してもよいでしょう。
例えば、一定額の未払給与が存在することは争えないが、労働者側が過大な慰謝料の上乗せなどに固執して譲らない場合に、使用者側が、未払給与と遅延損害金を超える債務が存在しないことの確認を求めて訴訟提起等を行うことが考えられます。
また、解雇の有効性が争われる場合で、使用者側にある程度の解決金を支払う用意があり、労働者側も雇用の継続にまではこだわっていない様子であるが、双方が提示する解決金の額に開きがあるため任意交渉での解決ができないときに、使用者側が、当該労働者が雇用契約上の地位にないことの確認を求める訴訟提起等を行ったうえで、中立的な判断機関を介在させ、適切な解決金の支払による和解を目指すという利用方法も考えられます(※)。
※ただし、訴訟等に至ると労働者側の姿勢が急変し、解雇無効を強硬に争う姿勢に転じる可能性もありますので、解雇の有効性(もしくは解雇ではなく自主退職であること)を基礎付ける事実をある程度立証できる場合以外にはお勧めできません。
